普段の通勤やちょっとした買い物に便利な自転車。でもルールをよく知らずになんとなく運転していませんか?

今まで大丈夫だったじゃん。もし違反がしても警察からも注意だけだったし。

これからは同じようにはいかないよ。自転車の
交通違反にも青切符が導入されるんだ。
2026年4月1日より自転車にも交通違反による反則通告制度、いわゆる「青切符」が導入され、違反をすれば自動車やバイクと同様に反則金が科されます。今までのように「なんとなくで運転」していると、無意識の交通違反で何千円もの反則金が発生してしまうことも。それだけでなく、曖昧な認識で運転していると交通事故にも発展しかねません。しかし違反は交通ルールさえ知っておけば防げるもの。無意識の違反で、わけもわからずお金を払うことは無駄な出費というほかありません。
この記事では、青切符導入後の自転車の違反金と交通ルールについて、読者の皆さんが知っておくべきことを解説します。正しいルールを知って安全運転を身に着けましょう。
青切符とは交通違反者に科せられる反則金制度
そもそも交通反則通告制度(以下: 青切符)とはなんでしょうか。 青切符は、一時不停止や無灯火運転などの軽微な交通違反に対し、反則金を納付することで刑事罰を免れることができる制度のこと、もしくはその通告書そのものです(書類としての青切符は正式に交通事件原票といいます)。

『反則金を払えば裁判沙汰にはしませんよ』ということだね。
自転車の青切符制度導入後、交通違反の処理がどういった手順で進むのかを以下の図にまとめました。青切符の対象となる軽度の違反は、期間内に反則金を納付すればそこで手続きが完了します。1期限内に反則金の納付に応じない場合は図中の赤切符の処理と同様に刑事罰が科せられることもあります。

赤切符は重い交通違反者に交付される告知書
飲酒運転などの重い交通違反で検挙された場合に交付される赤切符。青切符導入前(2025年8月現在)においては、違反の程度にかかわらず基本的に赤切符が交付されています。 赤切符の場合は現場での実況見分調書作成に始まり、必要があれば出頭と取り調べの後裁判という多くの手続きを受ける必要があります。有罪になった際は罰金の納付または懲役刑などの罰則に加えて、いわゆる「前科」が付いてしまうので注意しましょう。
青切符は16歳以上の運転者が対象
交通違反で反則金が科せられるのは全ての運転者ではありません。青切符の対象かどうかは運転者の年齢によって決まります。
青切符の対象は16歳以上の運転者のみとなっています。これは警察庁交通局が発表した自転車の交通違反に対する交通反則通告制度の適用によれば「義務教育を修了している年齢=交通ルールを最低限理解している」という根拠に基づくものです。 一方で14~15歳は青切符の対象外で、代わりに罰則のない自転車指導警告カードが交付されます。ただし悪質な違反が合った場合は赤切符の対象になることも。 ちなみに14歳未満は刑事罰の対象外なので、罰金が科せられることはありません。
違反の種類は100以上。主だった交通違反を紹介
青切符の対象となる自転車の交通違反は100種類以上に及びます。しかしすべての違反を把握しておくのは非常に困難。そこで代表的な違反を一覧にまとめましたのであらかじめ確認しておきましょう。以前は全て赤切符での処理でしたが、前述の通り、比較的軽度なものは今後青切符での処理となっています。
上にも記載しましたが、酒酔い運転・酒気帯び運転などの悪質な違反は、以前と同様に赤切符が交付されます(2024年11月より酒気帯び運転も罰則対象)。
青切符制度導入後の交通違反(一部) | ||
---|---|---|
交通違反の種類 | 切符の種類 | 反則金・罰則 |
一時不停止 | 青切符 | 5,000円 |
ブレーキ不良 | 青切符 | 5,000円 |
傘差し運転 | 青切符 | 5,000円 |
イヤホンの使用※1 | 青切符 | 5,000円 |
無灯火 | 青切符 | 5,000円 |
並走 | 青切符 | 3,000円 |
二人乗り | 青切符 | 3,000円 |
右左折方法違反 | 青切符 | 3,000円 |
遮断機の下りた踏切への進入 | 青切符 | 7,000円 |
通行区分違反(歩道走行・逆走) | 青切符 | 6,000円 |
スマホ等のながら運転 | 青切符※2 | 12,000円 |
酒気帯び運転 | 赤切符 | 3年以下の懲役または 50万円以下の罰金 |
酒酔い運転 | 赤切符 | 5年以下の懲役または 100万円以下の罰金 |
妨害運転(煽り運転など) | 赤切符 | 3年以下の懲役または 50万円以下の罰金※3 |
※2…危険を生じさせた場合は赤切符。1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科される。
※3…著しい交通の危険を生じさせた場合、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される。
「そもそもこれが違反だと知らなかった」と驚く方もいるのではないでしょうか。つまり普段から無意識のうちに交通違反を犯している可能性があるということです。青切符に該当するものは「うっかり」で違反する可能性がありますが、ながら運転やイヤホンの使用、踏切進入などは当然ですが自分がやらなければ検挙されないものです。重い違反の酒気帯び運転や煽り運転も同様。自制心を持って運転することが大切ですね。
本人確認で嘘をつくのはNG。素直に応じるべき

上に書いたように、自転車の運転でも様々な違反で検挙されることが分かったかと思います。ところで運転免許がいらない自転車では青切符交付時にどうやって本人確認を行うのでしょう。

捕まっても適当な住所と名前を
名乗れば反則金取られないんじゃない?

実際は徹底して確認されるから、嘘を
つくと後々困ることになるよ……。
警察は以下のような書類や情報から運転者の本人確認を行います。
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- 社員証や学生証
- 健康保険証
- 自転車の防犯登録
自転車の運転にはこれらの書類を携帯する必要はありません(防犯登録は義務だけど罰則無し)。一見本人確認が難しいように感じますし、偽名で反則金逃れもできるのでは?とも思えますよね。しかし警察は様々な方法で身元確認を行うので、そう簡単には逃げられません。
上記の書類等から確認ができない場合、まずは本人の口頭で氏名や住所を聞き出します。その後は家族や知人へ電話して確認、自宅へ同行して最終確認を行うという徹底ぶり。もし虚偽の申告が発覚すれば、警察官の業務を妨害したとして偽計業務妨害罪などの罪に問われる可能性も。その場合は反則金どころではない刑罰が科されてしまいます。

「一度の反則金は勉強代。次から注意する!」
と割り切りって素直に応じよう。
自転車でやりがちな交通違反とルールを理解する
ここからは自転車運転中によくやってしまいがちな交通違反を紹介していきます。どれも歩行者や自動車への迷惑にもなります。反則金額も併記しましたので「違反したらこんなにお金払わなきゃいけないんだ……」と頭の隅に留めておけば自戒になりますし、自身や周囲の安全な交通のためにもなるでしょう。ぜひお読みください。
自転車は自動車のルールに従うものという前提を知っておく
大前提として自転車は自動車と同じルールで走行する必要があるということを理解しておきましょう。
道路交通法が緩い頃(といっても数年前の話ですが)は自転車が歩道をバンバン走っていても、原則無しで交差点に新入してもお咎めなしでした。しかし「自転車は早く移動できる歩行者」程度の認識のまま自転車に乗るのは危険です。当時のままのイメージがあるから道路の左右を問わず走ったり、横断歩道を走行してしまうのでしょう。当然前後左右の安全確認もありません。
自転車に乗る時は「車両を運転している」ということを忘れないようにしてください。
一時不停止(反則金: 5,000円)

一時停止の標識や道路標示がある交差点では、停止線で停まって安全の確認をする必要があります。いちいち止まるのが面倒なのか、じわじわ進んで交差点を通過する自転車をよく見かけますが、これはNGで切符を切られてしまいます。ポイントは徐行ではなく確実に停止すること。しっかり停まって左右の安全を確認しましょう。
信号無視(反則金: 6,000円)


こちらもよくみかける違反。走行中でも歩行者信号に従って進行している人が多いように見受けられます。自転車は軽車両の扱いなので、自動車用の信号に従う必要があるのを知らない人が多いのかもしれません。ただし「歩行者用信号」に「歩行者・自転車専用」の標識がある場合は、車道走行中でも歩行者用信号に従う必要があります。
歩道・車道どちらも走れる自転車なので「今は歩行者用信号が青だから進んじゃおう」と、その時々で自分に都合の良い信号を見て走っている方もいるのではないでしょうか。自分が進行する場所に対応した信号をよく確認して運転しましょう。
歩道走行・逆走などの通行区分違反(反則金: 6,000円)
幅の広い歩道ではしばしば自転車が走っているのを見かけますが、基本的に自転車は車道のみ走行可能です。歩道を通行したい場合は自転車を降りて押しましょう(降りている間は歩行者として扱われます)。ちなみに以下の条件を満たしていれば自転車で歩道を走行することができます。交通量が多い車道を走るのが危険な場合も同様。
- 自転車専用道路・普通自転車歩道通行可の標識がある歩道
- 13歳未満or70歳以上、体の不自由な運転者
- 道路工事や連続した駐車車両などで、道路の通行が困難な場合
なお上記の条件は、車格や構造上の条件を満たした普通自転車の場合のみ有効(電動アシストの有無は無関係)。普通自転車の規格である幅60cmを超えるマウンテンバイクや、全長190cmを超えるタンデム自転車などは普通以外の自転車として扱われ、上記条件を満たしていても歩道を走れませんので注意。
ちなみに上記条件を満たしていなくても即違反になるとは限らず、歩道走行時にスピードを出して歩行者の妨害を行う、警察官の指示に従わないなどの危険運転があった場合などに違反扱いとなります。歩行者優先を常に念頭に置いて運転することが大切です。
逆走についてですが、これは「自転車はとにかく車道を走ればOK」とルールがうろ覚えになっている人がやりがちな違反でしょう。自転車は左側通行が原則ですが、道路右側の歩道にいる自転車乗りが

たしか歩道を走るのは駄目だったよな?
よし……車道に出よう!
と、車道を走るとそのまま逆走になってしまいます。自分だけでなく対向車や歩行者にも危険が及びます。通行帯には十分気をつけましょう。
通行区分違反の中でも特に間違えやすいのは、左折専用レーンがある交差点の通行方法でしょう。左折はそのまま専用レーンを使えばOKですが問題は直進・右折をする場合にどこを走るべきか。正解はどの場合も左折レーンからのみ進入することです。基本的に自転車は第一通行帯(一番左の車線)のみしか通行できません。直進レーンを使用して交差点に進入すると通行区分違反となってしまいます。
左折専用レーンがある交差点を直進したい場合は左折レーンの右寄りを走行して交差点に進入すればOK。右折の場合も同様に左折レーンから交差する車線まで進行しましょう。
危険を感じたら無理せずに左折して交差点を迂回したり、横断歩道を渡ったりして乗り切るのも有効。多少の手間は我慢して安全第一で走ることが大切です。
交差点右左折方法違反(反則金: 3,000円)
交差点右折時に小回りで右折した場合などが対象の交通違反。
自転車はあらゆる交差点を右折する際、二段階右折をする必要があります(T字路含む)。ちなみにY字路の右方向への進行時は二段階右折する必要はありません。
上の図のように、車線の数に関係なく右折時は必ず二段階右折をしましょう。基本的な右折方法は原付等と同様。第一通行帯(一番左側の車線)を進んで交差する車線の左端に到達したら方向転換し、信号が変わったら進行すればOKです。
なおこの違反の反則金は3,000円ですが、信号のある交差点で二段階右折をしなかった場合は信号無視扱いとなり6,000円の反則金が適用されます。
運転免許がある方は、原付運転時に片側3車線以上の交差点を右折するための二段階右折が必要なことを知っているでしょう。しかし自転車での交差点の右折は基本的に二段階右折の必要があることを知らない人は多いのではないでしょうか。
遮断踏切立ち入り(反則金: 7,000円)

踏切で警報機が鳴って遮断機が下り始めたにもかかわらず、踏切に侵入した場合の違反。何分も開かない踏切に引っかかりたくない気持ちはわかります。しかし違反金7,000円は比較的高額ですし、なにより危険。警報機が鳴ったら大人しく待ちましょう。
運転中のイヤホン使用(反則金: 5,000円)

正確には、イヤホンやヘッドホンの使用で周囲の音が聞こえない状態での運転に対する違反です。周囲にいる歩行者や接近する自動車に気づきにくくなり、交通事故に繋がることも。 イヤホンの使用自体は違反ではないので、耳をふさがない骨伝導イヤホンや片耳だけの使用なら問題にならない場合もあります。しかし東京都や神奈川県など多くの都道府県で、自転車の運転中にイヤホンを使用すること自体を法令にて禁止しています。安全のために使用を控えるのが一番いいかもしれませんが、どうしても使いたい方は、あらかじめお住まいの都道府県で禁止されているかを確認しましょう。
スマホ等のながら運転(反則金: 12,000円)
こちらも違反者をよく見かけます。走行中の操作はもちろん、画面を凝視するだけでもアウト。注意散漫になる上にスマホを手で保持しているとブレーキやハンドル操作が疎かになり、交通事故の危険が高まります。ながらスマホが原因で交通の危険を生じさせた場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます。急ぎのようで無ければ使用を控え、緊急でスマホを使いたいなら路肩に停めてからにしましょう。スマホをナビとして使いたい方にはハンドルに取り付けるスマホホルダーがオススメです。下に工具不要でハンドルに簡単取付できるホルダーのリンクを貼っておきます。ナビ用途でも画面凝視はしないようにご注意を。
まとめ: 交通違反を知って自他防衛
「自転車は車両だから自動車と同じルールで」という意識があるだけで運転がかなり変わってきます。基本的なルールを頭に入れたら、あとは周りの迷惑にならない円滑な交通を意識して運転することが大切です。「こういう時はどうしたらいいんだろう?」と疑問に思ったら都度正解を調べれば十分でしょう。 交通違反で何度も検挙されて何千円も払うのは勿体ないです。
ルールを理解して運転していても、歩行者・他車両の飛び出しなどで交通事故に遭ったり、場合によっては加害者になってしまう可能性も。加害者になってしまったら被害者への補償を行う必要がありますが、無保険の場合は全て自分のお金で賄わなければなりません。何千万円もの損害賠償は簡単には支払えないでしょう。
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